あらすじ
「お前らの歌(まほう)、スペルミスだらけだぞ」
音楽が魔法となり、数式が旋律となった時代。
喉にデバイスを埋め込み、歌声で物理法則を操る人類の中で、地下の清掃員カイだけは知っていた。
この世界を動かしているのは『歌』ではなく、絶滅したはずの『文字(すうしき)』であることを。
物理法則のバグを掃除する毎日を送っていた底辺清掃員のカイ。
ある日、彼はエリートが集まる地上広場で、国家級の歌姫リアの魔法が暴走する場面に遭遇する。
最新デバイスを使い、何十人もの魔導師が束になっても止められない絶望的な破壊現象。
それをカイは、たった一吹きの「口笛」で上書きし、デバッグしてしまった。
「……変数にゴミが入ってたぞ。その定数、古代文字で言えば『火』じゃなくて『砂』だ」
正体を隠して立ち去るカイだったが、その圧倒的な「音」を聴いてしまった歌姫リアは、自身のプライドを捨てて彼を追い始める。
これは、既製品の歌(スクリプト)しか歌えないエリートたちが、失われた『文字』を自在に操る少年に振り回され、やがて世界の理を再構築していく物語。
「世界は楽譜(システム)で、俺は指揮者(デバッガー)だ」