あらすじ
俺は伝説の『聖剣』の下に潜り込み――大胸筋でベンチプレスした。
ヤンデレ聖女の『監禁結界』に閉じ込められたので――呪いの鎖で懸垂(チンニング)した。
「いい重量だ」――これは、愛も絶望も、すべてを筋肉で持ち上げる男の物語。
◆ ◆ ◆
勇者を選ぶ聖剣を、みんなが厳かに“抜こう”とする中――
俺だけは思った。「いや、これベンチプレスしたほうが大胸筋に効かないか?」
前世は日本の体育大生。転生した今も筋肉理論だけは忘れなかったマッスル・グレインは、聖剣を抜けず勇者失格になる。だが本人はまったくへこたれない。
「フォームが悪かったな。次は上げる」
森で鍛え直していた彼を見初めたのは、愛が重すぎるヤンデレ聖女セレスティア。
「私だけを見て。絶対に逃がさない……」と監禁結界に閉じ込められるが、マッスルは暗所トレーニングに最適だと歓喜し、呪いの鎖を握りしめる。
「よし、この鎖は懸垂(チンニング)にちょうどいい!」
彼が広背筋の拡張だけで結界を粉砕すると、聖女は「初めて私の重さを受け止めてくれた……」と謎の多幸感に包まれ、さらなる異常な執着を向け始める。
泣かせた罪で襲ってきた女騎士とは、なぜかプロテインを交わす師弟関係に。
さらに、ロリババア大賢者は彼の筋トレを“究極の高位身体魔術”と勘違いし、『全細胞魔力励起』などと理屈をこじつけて世界中に論文をばらまいてしまう。
「重力歪曲だと? いや、ただのスクワットだぞ?」
魔法至上主義の世界は、一人の筋肉バカの無自覚な行動によって、少しずつ、しかし確実に書き換えられていく。
これは、重すぎる愛も絶望も、聖剣すらも。
全部まとめて持ち上げてしまう男の物語。
重すぎる愛なら、持ち上げればいい。