あらすじ
──因果の底で鳴るもの
世界には、誰も気づかない“音”がある。
それは風の音でも、心臓の鼓動でもない。
もっと深く、もっと静かで、もっと残酷な──因果の軋む音。
人の選択、後悔、嫉妬、願い。
積み重なった感情は、やがて“音”となって世界を揺らす。
その音が乱れたとき、世界の流れは歪み、人の運命は狂い、深層──因果の海の底がざわめき始める。
その歪みを聴き、触れ、宥める者たちがいる。
調律師。
彼らは因果の音を読み取り、必要とあらば“切り落とし”、必要とあらば“抱きしめ”、世界の流れを整える。
だが、その仕事は決して美しくはない。
救える命と救えない命。
守れる心と守れない心。
調律師は常に、その境界線に立たされる。
そして、その最前線に立つ一人の男がいた。
馨《かおる》
協会でも指折りの調律師。
冷静沈着で、因果の歪みを前にしても一切怯まない。
腰には銀色の刀──銀刃《ぎんじん》
因果の糸を断つためだけに鍛えられた刃。
彼は、必要とあらば“運命そのもの”を切り捨てる。
そんな男のもとに──
一人の新人が配属された。
絢《あや》
涙脆く、お人好しで、調律師という仕事に向いているとは到底思えない少女。
だが、彼女にはまだ知らない“音”があった。
世界を揺らすほどの、深層すら震わせるほどの──金色の音。
これは、その音が芽生えるまでの物語。