あらすじ
『ウラ……メシイ……』
筆で描かれただけの細く紅い唇から、かすれた声が、静けさの中に響いた。
座敷のガラスケースの中にいるはずの古い日本人形が――美保子に話しかける、
「ちょっと、お千代ちゃん。そのかすれ声止めてよ。怖いじゃない。電気つけていい?」
『ダメ……マブ……シイ……』
「だから、その声止めてって。も〜分かったわよ。部屋が乾燥してるって言いたいんでしょ?濡れタオル持ってくるから」
日本人形の遠回しすぎる要求に、美保子は深くため息をつき、体を起こした。
常夜灯だけの部屋は、相変わらず薄暗い。
日本人形のお千代は、とびきり面倒くさい美保子の友達なのだ。
長い年月を経たものって、愛おしいよね。