あらすじ
深海10,000m。そこは、嘘が水圧で押し潰される場所。
マリアナ海溝の底に建つ極限探査ステーション『アビス』。
外界から完全に遮断されたその密室で、ある日、唯一の「脱出・通信担当者」が不可解な死を遂げた。
事故か、殺人か。
混乱する科学者たちの中で、若き分析官・如月澪(きさらぎ みお)は冷徹にデータを読み解く。
「午前6時、酸素濃度20.9%。隔壁の結露、0.3ミリ。――すべてが正常。
ただし、唯一の不純物は、容疑者・佐伯陽太の『笑顔』が1.8秒も持続したこと」
澪の潔癖なまでの分析が、一人のムードメーカーに向けられたとき、
科学者たちの「仮面」が剥がれ落ち、戦慄の真実があぶり出される。
この中に、専門知識を完璧に予習した「偽物の科学者」が紛れ込んでいる――。
通信不能。救助不可。潜水限界まで、あと100時間。
0.1%の綻びも許さない「氷の分析官」と、正体不明の「人狼」による、命懸けの査問会議が始まる。