あらすじ
「あんたが、お母さんを殺したんだよ」
目覚めると、母は冷たくなっていた。
記憶を失った夏美に、親友の朱里は残酷な事実を突きつける。
自分の指先に残る、錆びた鉄の匂いがする赤いシミ。
私は、本当に母を殺したのか……?
認知症を患う夏美にとって、世界は常に不確かな霧に包まれている。
けれど、一日に一度、十一時十五分からの「一分間」だけ、霧は晴れ、彼女は真実の自分を取り戻す。
しかし、そこで目撃したのは、変わり果てた母の姿を冷徹に「検品」する祖母の横顔だった。
「後は大丈夫。私に任せて」
救いの手を差し伸べる祖母。本性を現し夏美を操る親友。
十一時十六分、再び霧が立ち込めるまでのカウントダウン。
砂時計の最後の一粒が落ちたとき、夏美の口角は、ある女と同じ形に吊り上がる――。
犯人は、誰か。
真実は、なぜ消えるのか。
ラスト一行、記憶の霧に隠された狂気が牙を剥く。