あらすじ
【プロローグ】
静かな森の奥。
月明かりが差し込む、小さな家。
そこには、種族の違いを越えて、
“家族”のように笑い合う日常があった。
「シオンちゃん!こっち、いこ!」
白兎の少女、セレナ・フィリアが無邪気に手を引く。
「あたしが守るって言っただろ」
少しぶっきらぼうに、それでも優しく答える
黒狼の少女、シオン・ヴァルク。
その時間は、確かに幸せだった。
――その日までは。
響いたのは、何かが壊れる音。
空気を裂く気配。
濃く広がる、血の匂い。
シオンは見ていた。
守ると約束したはずの少女が、
目の前で奪われていくのを。
何もできずに。
伸ばした手は届かず、
声も届かず、
ただ崩れていく“当たり前”を見ていることしかできなかった。
そして――
その名前さえも、奪われた。
残されたのは、
守れなかった約束だけ。
【あらすじ】
この世界では、“価値”が命を決める。
白兎の少女セレナ・フィリアは、
血は病を癒し、肉は不老をもたらし、髪さえも価値を持つ――
希少な種族の血を引く存在だった。
その価値ゆえに家族は襲われ、すべてを失う。
名前を奪われ、過去を押し込められた少女は、
“ノエル・フィリア”として生きることを強いられる。
一方、黒狼の少女シオン・ヴァルクは、
守れなかった約束と後悔を抱えたまま生きていた。
そして数年後――
2人は同じ学校で再会する。
「……セレナ」
その一言に、少女は確かに反応した。
けれど――
「……違う……私……は、ノエル……です……」
それは否定か、それとも逃避か。
失われた名前。
押し込められた記憶。
守れなかった約束。
これは――
“価値”として扱われた少女と、
それでも“ひとりの人”として守ろうとする少女の物語。
【人物紹介】
■シオン・ヴァルク
黒狼の娘。強い正義感を持ち、いじめを見逃せない少女。
過去にセレナを守れなかった後悔を抱えている。
外では強気で冷静だが、ノエルに対しては優しさを見せる。
再会したノエルを前に、喜びと罪悪感の間で揺れ続けている。
一人称:俺(通常)/私(ノエルに対して)/あたし(幼少期)
呼び方:基本呼び捨て
■ノエル・フィリア(元:セレナ・フィリア)
白兎の娘。希少種の血を引く少女。
家族を失い、名前を奪われ、“ノエル”として生きている。
怖がりで大きな音に敏感。
学校では隠れいじめを受けている。
記憶は断片的に残っているが、
自分を守るため無意識に過去を押し込めている。
一人称:私
呼び方:基本「さん」付け
■セレナ・フィリア(過去)
ノエルの本来の姿。
人見知りだが、シオンには強く懐いていた。
無邪気で優しく、素直に感情を表に出す少女。
シオンのことが大好きで、「シオンちゃん」と呼んでいた。
一人称:セレナ
■ノエルの母
希少種。血・肉・髪すべてに価値を持つ存在。
その価値ゆえに狙われ、家族を危険から遠ざけるため森で暮らしていた。
■肉食亜人(襲撃者)
希少種の価値を狙い、ノエルの家族を襲った存在。
欲望によって動く、世界の“価値”の象徴。