あらすじ
都会の出版社で働く編集者・倉野茅乃(くらの・かやの)は、職場で「正論ばかり」と煙たがられ、孤独な三十代を生きていた。亡き祖父の遺品整理中、行方不明だった大叔父の手記が見つかる。最後の頁にはこう書かれていた――「この村は嘘が九割。残りの一割を見抜かねば、ここから出られぬ」。
茅乃は山深い限界集落「霞戸村(かすみどむら)」に向かう。出迎えた老婆は穏やかに笑い「うちの村のもんが言うことはな、九割が嘘やと思うとき。それを聞き分けるのが、よそ者の仕事や」と告げる。
大叔父について尋ねると、村人たちの証言はことごとく食い違う。山で死んだ。川下に逃げた。今も山小屋にいる。来たことなどない――。混乱する茅乃に、村の若者・青木がただ一人こう言う。「俺は本当のことしか言わない。だから誰にも信じてもらえないんだ」。
青木と共に矛盾を整理するうち、茅乃は気づく。九割の嘘は...