あらすじ
五年間、私は王太子殿下の隣で、ただ静かに数字を読み続けていた。
「行き遅れの二十六歳より、十七歳の妹のほうが妻に相応しい」
謁見の間で告げられたその一言を、私は深く頷いて受け入れた。
公爵令嬢ヴィオレッタ。
家督経営も、妹の浪費の尻拭いも、王太子家の家計の穴埋めも、すべて私の手元で回してきた。
それを、誰もまともに数えてはこなかった。
婚約解消の馬車で、十年仕えてくれた執事のロディオンが初めて私の手を握った。
「私はお嬢様より八つ年上の三十三歳でございますが、それでも妻にしていただく自信がございます」
執事の上着の内側には、なぜか剣帯が仕込まれていた。
そして彼の懐にあったのは、王家にすら通用する旧侯爵家の血統証明書と、誰も正体を知らないある商会の会頭印。
十年そばにいた男の、私が知らなかった半分。
私は契約結婚を申し出た。
期限は一年。
そのあいだに片付けるべきものが、彼にも、私にもあった。
ところで、年齢で女を測られる方は、いずれご自身の年齢でも測られるのかしら。