あらすじ
王立学園に通う男爵令嬢ロシーナ・カッセルは、家業である測量士を目指し、日々土壌調査に没頭していた。周囲からは変わり者と噂されるが、その観察眼は、誰も気づかぬ地盤の異常すら見抜いてしまう。
ある日、庭園で拾った駒を届けるために足を踏み入れた高位令息のテラスで、公爵令息ユリウス・フォン・ランベルトの完璧に組み上げられた戦略に、小さな違和感が生じる。
ロシーナの指摘に呼応するように、盤上の地形は崩れ始める。
それは、決して覆らないはずだった「完成された世界」に、初めて生じた綻びだった。
その瞬間から、二人の関係は静かに、しかし確実に変化していく。
しかしロシーナは知らない。自分の家であるカッセル男爵家が、国家の最上位機密に関わる一族であることを。
そして彼女の見抜く力は、やがて国家の均衡だけでなく、ユリウス自身の選択までも揺るがしていく。