あらすじ
逃げるのだけは得意だった。
大学を辞めたことも、仕事が続かなかったことも、母の電話に出られなかったことも。
男はずっと、都合の悪いものから逃げ続けてきた。
そして最後まで、母に「ただいま」と言うこともできなかった。
そんな男が、ある夜、車に轢かれそうになった少年を助けて命を落とす。
目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
彼は地方貴族アルベルト家の赤ん坊、レオン・アルベルトとして二度目の人生を与えられていた。
優しい母。
不器用な父。
あたたかい屋敷。
もう一度与えられた、帰る場所。
しかし、レオンの中には前世で逃げ続けた記憶が「黒い水」となって残っていた。
逃げるための力だと思っていた黒水は、やがてレオンを守り、仲間を守り、奪われた帰り道を取り戻す力へと変わっていく。
これは、英雄になりたい少年の物語ではない。
逃げ続けた男が、家族と仲間に支えられながら、
今度こそ「ただいま」と言える人間になるまでの物語。