あらすじ
「僕は、父が汚した手によって、洗われた命だ」
大阪、城東区鴫野。
僕は、完璧な父・正和と、慈愛に満ちた母・芳恵の「進藤家の長男」として育てられた。
エンジニアとしての理性と、音楽を愛する感性。
何不自由ない家庭。しかし、僕の腕にある醜い痣(あざ)だけが、その幸福が「偽物」であることを囁き続けていた。
十九歳の誕生日、僕は知る。
自分を産んだ母は薬物中毒で野垂れ死に、実の父は殺人犯の怪物であることを。
そして、今の僕を繋ぎ止めているこの「家」が、金と絶望で買い取られた嘘の城であったことを。
育ての両親を死に追いやり、実の両親の呪いを受け入れ、すべてを灰にした後に残ったのは、血を吐くような言葉の数々だった。
これは、二十五年の長い助走を経て、一人の男が「誰でもない自分」の名前を取り戻すまでの、残酷で美しい再生の記録。
【構成】
第一章:二十年の助走(嘘の愛に育まれた幼少期から決裂まで)
第二章:漂流する血脈(実の両親の真実、放火、そして家族の崩壊)
第三章:抒情詩の帰還(三年の空白。灰の中から言葉を紡ぎ出す再起)
残酷描写有り(放火、薬物中毒、凄惨な死、自傷的な描写が含まれるため)