あらすじ
舞台は近未来、政府による厳格な管理体制の下で運営される都市国家。
先の内戦で民間人を含む数千人を殺傷し、戦犯として死刑宣告を受けた元軍人、タカツキ・カムロ。収監中の彼の元に、停戦監視団のジャーナリストであるエノーカ・ジェイドが訪れる。世間からは「冷酷な拷問官」「反省のない怪物」とされている彼と対峙しながら、エノーカは拭い切れない違和感を覚えていた。
時は遡り、戦時中。環境破壊と人口減少の果てに、残された人類は一つの統合都市国家で暮らしていた。管理社会を統括する〈中央政府〉と、管理社会に異を唱える反政府勢力〈レジスタンス〉は、長い内戦状態にあった。
中央政府の科学研究局に所属する研究者、ユリシス・ハインラインの下に、技術連絡官としてタカツキが配属される。人間的な情動に乏しく、合理性を極端に重視するユリシスと、戦場でしか生の実感を得られないタカツキ。噛み合わない関係のまま、二人は次第に奇妙な信頼関係を築いていく。だが、世界の歪みは日常を巻き込みながら少しずつ加速していく。
これは、誰もが加害と無関係でいられない世界の中、それでも選択を手放さなかった彼等の物語。