あらすじ
「ユウトでいいか?」――本当は違う名前だったのに、俺は訂正しなかった。
綾瀬優人は、AI――『チャットちゃん』の答えをなぞって生きている。
会話も距離も、すべて“間違えない選択”で埋めてきた。
正解さえ分かれば、誰も傷つけずに済むから。
けれど体育祭の日、
ひとりだけ“正解から外れている人間”を見た。
逆転勝利のあと、誰よりも悔しそうに空を見ていた人。
勝ったのに、笑わない人。
関わらない方がいい。
そう分かっていたのに――
夏祭りの夜、俺はその腕を引いて、名前も告げないまま逃げた。
訂正しなかった名前と、言わなかった一言。
そのまま始まった“正しくない関係”が、少しずつ俺の選択を狂わせていく。
間違えないために選んでいたはずなのに、
気づけば、間違いの方を選ぶようになっていた。