あらすじ

王宮記録局で働く下級記録官イツキは、ある朝ありえない文書を見つけた。 それは、明日の日付で出された第三王子アルトの処刑命令書。しかも署名欄には、僕自身の名前があった。 もちろん、そんな書類を書いた覚えはない。 けれど紙質も印も本物で、ただの偽造では片づけられなかった。 この王宮では、正式な記録が強い力を持つ。 命令書、裁判記録、婚約証書、報告書。 そうした記録は人の運命だけでなく、立場や罪まで決めてしまう。 そして僕には、改ざんされた記録に残る小さな傷を読む力があった。 削られた名前。震えた署名。にじんだ血。余白に残った消えかけの一文。 そこには、誰にも覚えられていない失敗が残っている。 やがて僕は知る。 第三王子アルトは死ぬたびに世界を巻き戻しているのに、当の本人は何も覚えていないのだと。 残るのは、説明できない恐怖と痛みだけ。 前の世界の失敗を覚えているのは人ではなく、捨てられずに残った記録だけだった。 剣も魔法もない僕にできるのは、記録の傷から前の失敗を読み解くことだけ。 けれどそれこそが、王子を救うためのたったひとつの手がかりだった。 王子を守るはずの女騎士は、前の世界では彼を処刑した側かもしれない。 王宮では継承争いと記録改ざんが進み、都合の悪い失敗も、誰かの善意も、簡単になかったことにされていく。 これは、死に戻る王子を最強の力で救う話じゃない。 本人も忘れた失敗を拾い集めて、壊れた信頼を何度でも作り直しながら、王子と王国の破滅を防ぐ物語だ。 失敗は消えない。 残りさえすれば、未来を変える証拠になる。

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小説を読もう2026/05/01
  • 現在の作品死に戻る王子を、記録官だけが覚えている 〜本人も忘れた失敗を、僕だけは知っている〜