あらすじ
「家族になってくれるって、言ったよね?」
——七年前、俺は、軽い気持ちで、約束した。
クロヒョウ獣人の幼馴染、シオン。
別の小学校の、休日にだけ会う、不思議な遊び友達。
ある夏の日、二人で裏山の秘密基地にいた俺たちは、急な夕立に降り込められた。雷が苦手だったあいつは、俺の胸に泣きながらしがみつき、ぽつりと言った。
「僕は……家族が、欲しい」
俺はその時、親父と一緒に観た映画の義兄弟のシーンを思い出していた。
だから軽い気持ちで、こう答えた。
「なら、俺が、家族になってやるよ」
——他意は、なかった。
他意なんて、当時の俺には持ちようもなかった。
その約束を交わしてから、一ヶ月も経たないうちに親父の転勤の辞令が出た。
俺は何も言えないまま、シオンと別れた。
そのまま、七年が経った。
———
七年後。
親父の再度の転勤を引き金に、俺は地元に戻ってきた。
入学した大学の講義室で、俺の机の前に、一人のギャルが立った。
黒い長い髪。ぴんと立った黒い耳。長くしなやかな黒い尻尾。
胸元の開いたシャツ、短いスカート、艶のあるリップ。
「ねぇ、気づいてくれないの?」
——雷雨の日、小屋でぐしゃぐしゃに泣いていた、幼馴染。
男の子だと思っていた、その相手。
その全部が、俺の勘違いだった。
そして、シオンがあの日の約束を、ただの一度も忘れていなかったこと。
七年という月日が、シオンの中の真っ黒な感情をぐつぐつと煮詰めに煮詰めて、もう戻れないところまで連れていっていたこと。
知らされるのは、再会からたった一週間後のことだった。
「君を、捕まえに来たの」
——カラッとしたギャルの皮を被った、七年分の独占欲。
俺は、彼女の作り変えた秘密基地で、七年前の約束の代金を、一晩かけて払わされる。