あらすじ
――おれは……死にたくない
刑務官に房から連れ出されたときは、まだ半分夢の中にいた。廊下を進む――硬い床に響く靴音が少しずつ寝ぼけた脳を刻んでいき、あの部屋に近づくにつれて意識は嫌でも鮮明になっていった。
すると今度は足から力が抜けていった。膝が小刻みに震え、踏み出すたびにぐらついた。転ばないようにするだけで精いっぱいで、おれはそのことに神経を集中させていた。だからその時点では、まだかろうじて現実感がなかった。
だが処刑室の扉の前に立った今、胸の奥から猛烈な生への渇望が一気に噴き上がった。
おれは――死にたくない。