あらすじ
世界は、静かに狂い始めた。
新宿署の刑事・加賀美誠一は、愛娘を通り魔事件で亡くして以来、街のあらゆる音が「暴力」として脳を突き刺す聴覚過敏に苦しんでいた。ノイズまみれの地獄で精神を削り、いつか自分も音を止めるために「加害者」になるのではないかという恐怖に怯える日々。
そんな折、加賀美は、現代の聖者と呼ばれる医師・東雲(しののめ)が営むクリニックを訪れる。
そこで施されるのは、項に銀の鍼を沈め、脳の「静止点」を呼び起こす未知の処置。
一瞬にして音の消失した世界で、加賀美は数年ぶりに「安寧」という名の麻薬に酔いしれる。
しかし、その「救済」は感染するように街へ、そして警察組織へと浸透し始めていた。
調律された人々は、凄惨な死体を見ても微笑みを絶やさず、感情という名の不純物を削ぎ落としていく。
加賀美の後輩・若林は、変わり果てていく先輩と、無機質に変質していく世界に異変を感じ、独り「音」を守るために抗い始める。
「救済」か「刑罰」か。静寂に支配された都市で、一人の男が最後に選ぶ「不協和音」とは――。