あらすじ
目を覚ました私は、夜の学校にいた。
窓の外は完全な闇で、授業は夜に行われるという。そこに集められた生徒たちは、誰もがどこか現実感に欠け、過去の話や自分の名前について語ろうとしなかった。
ただ一人、違和感なく存在しているのは担任の教師だった。
古びたスーツを着たその男は、学校の仕組みや校則について多くを語らず、私にだけ「まだ、間に合う」という意味深な言葉を向ける。
やがて私は気づく。
痛みを感じ、体温があり、眠ることができるのは――この学校では私だけだということに。
夜の学校に集められた生徒たちは、すでに死んでいる存在だった。
それでも教師は、真実を説明しようとしない。
生徒たちは一人、また一人と「卒業」を迎え、静かに姿を消していく。
教師はそれを止めず、ただ見届ける。
夜明け前、校則が揺らぎ、学校そのものが不安定になり始める中、教師は私に告げる。
「ここにいちゃいけない。戻りなさい」
次に目を覚ましたとき、私は現実の世界にいた。
それでも手元には、夜の学校で使っていたはずのノートが残されている。
最後のページに記されていたのは、見覚えのない文字。
――『卒業おめでとう』
生きているとはどういうことか。
大人は、子どもをどこまで導けるのか。
夜の学校を舞台に、生と死の境界を静かに描く幻想譚。