あらすじ
湊と千紘は、互いに強く惹かれながらも、
心の奥を言葉にできないまま関係を続けていた。
大切に思うほど臆病になり、
相手を失う怖さが沈黙を生み、
沈黙がさらに距離を作っていく。
「好き」と言えば壊れてしまいそうで。
「離れない」と言えば縛ってしまいそうで。
ふたりは互いを想いながら、
最も必要な言葉だけを避け続けた。
しかし、日常の中に積み重なった小さな誤解、
すれ違い、諦めが、やがて決壊する。
千紘は湊の沈黙に傷つき、湊は千紘の沈黙に怯え、
愛は確かに存在しているのに、
確かめ合えないまま壊れていった。
やがて千紘は、何も告げずに姿を消す。
残された湊は初めて気づく。
沈黙は守るためのものではなく、逃げだったのだと。
追いかけても届かず、謝っても届かず、
叫んでも届かない。
湊は崩れ落ちながら、それでも思う。
失ったものを、今度こそ言葉にするために。
沈黙の物語は、喪失の物語であり、告白の物語である。