あらすじ

クラスの太陽・桐嶋日和に、橘澪は近づかないようにしていた。 眩しすぎるものには、距離を置いた方がいい。それくらいのことはわかっていた。 でも夏休みの初日、忘れ物を取りに行った学校の音楽室で、澪は彼女を見てしまった。 誰もいない教室で、同じフレーズを何度も何度も弾き直している、日和の背中を。 クラスにいるときとは違う顔で。笑ってもいなくて。ただ、鍵盤と向き合っていた。 気づいたら、引き戸を開けていた。 翌日も、音楽室に行った。 翌々日も、行った。 気づけば、毎日行っていた。 夏の間だけの、ふたりだけの時間。 海に行って、夕立に濡れて、花火を見て。 日和の「本当の声」を、少しずつ聴くようになった。 日和は言っていた。「嘘をつくのが上手い」と、笑いながら。 澪は気づき始めていた。 クラスの太陽でいることが、日和にとって全部じゃないことに。 そして自分が——もうとっくに、引き返せない場所にいることに。 文化祭まで、あと少し。 日和がピアノを弾く、その日まで。 これは、沈まない太陽と、それを見上げる一人の女の子の、一夏の話。

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小説を読もう2026/04/30
  • 現在の作品きみが沈まない夏