あらすじ
——顔じゃなくて、僕を見てほしい。なのに僕は、彼女の好意だけを見落としている。
九十九駿佑《つくもしゅんすけ》は、顔だけで好かれることに疲れている高校二年生。和風喫茶『月白』で働く彼は、接客や茶道のように「型」があるものなら落ち着いてこなせる。けれど恋愛だけは違った。相手が見ているのは自分なのか、それとも顔だけなのか、どうしても信じきれない。
そんな九十九の前にいるのが、同じ喫茶で働く椎葉紬《しいばつむぎ》。よく喋り、よく笑い、変な造語で九十九を振り回す彼女は、九十九の顔を褒めない。寝癖や仕草や、食器を置くときの音の小ささを見てくれる。九十九にとって、彼女は少しだけ特別な存在になっていた。
けれど紬には、「彼氏みたいな人」がいるらしい。
九十九はそう思い込む。紬は紬で、九十九が「恋愛に慣れていて明るい子」が好きなのだと誤解していた。地味な読書少女だった彼女は、髪を切り、メイクを覚え、少しずつ“今っぽい子”へ変わろうとする。すべては、九十九に恋愛対象として見てもらうために。
そして紬は、恋愛経験があるように見せたい。少しは嫉妬してほしい。そんな不器用な作戦だった。
だが九十九は、その相手を本物の彼氏だと思い込む。しかも偶然、彼——南雲春夜《なぐもはるや》と知り合い、恋愛相談までしてしまう。
好きな人の、たぶん彼氏に、恋愛相談をする。
これは、顔だけで好かれるのが怖い少年と、彼の好みになろうとして空回る少女が、互いの本音に辿り着くまでの勘違いラブコメ。
不定期更新です。