あらすじ
「……あなた、誰?」
妻を亡くし、男手一つで育ててきた愛娘が、ある日突然、俺を忘れた。
どんな医者(治癒士)に診せても、どんな薬を試しても効果はない。昨日できたことができなくなり、記憶が削られ、娘が娘でなくなっていく。
絶望の中、不器用な父親が最後の希望を託したのは、この世界に語り継がれるおとぎ話——迷い、失った者だけが辿り着けるという『聖女の蓮池』だった。
匂いの消えた異界の森。白く発光する蓮の花。
そこで起きた残酷で美しすぎる奇跡と、不器用な二人が新しく紡ぎ直した日常の軌跡。
――今日、娘が結婚する。
これは、ハイファンタジーの世界の片隅で起きた、記憶を失った娘にもう一度「お父さん」と呼ばれるまでの、痛くて優しい家族の物語。