あらすじ
男は死のうとしていた。
自分の音楽で生きていく、それが男の夢だった。
しかし、その夢は叶う気配すらないまま、男の心はポッきりと折れてしまった。もうあがくことの出来るほどの熱は男の心にはない。
かといってそれを割り切って、生きていけるほど男は強くはなかった。
「このまま夢の残像に苦しむくらいなら、もういいや」
そう思い男は決断し、死を選んだ。
せめて最後に歌おう、そう思い望んだ最後の路上ライブ。
結果はいつも通り。まばらな人混みの中、せめてもの拍手をくれる優しい人が数人。
男はその数人に頭を下げ、最後のライブの余韻に浸りながら、その場を後にしようと楽器を片し始めていたその時、男の背中に声がかかった。
「もしかして死ぬつもりですか?」
これは夢に心折られ、死を選ぶしかなくなった弱くてめんどくさい男が、たった一人の不思議なファンのおかげで最後に、最高の光を放つことが出来たお話。
「こんな終わり方なら、幸せじゃないか」
生きるのが下手な男が、最後の最後に救われた。
そんな、一人の人間の、人生のなんて事のない幕引きのお話。