あらすじ

割れたアスファルトと、ずいぶん前に役目を終えた信号機。 人の消えた静寂の街で、時計修理工は今日も作業台に向かっている。 直しているのは、一日に六秒遅れる銀色の懐中時計。 持ち主が誰だったのか、とうの昔に忘れてしまった。 「修理は非効率です。廃棄を推奨します」 定刻通りに声をかけてくる相棒の正論を聞き流し、修理工は小さな歯車を組み上げていく。 無意味で非効率な作業。それでも、部品が噛み合い、針が進む。 その連鎖だけが、孤独な世界で確かに時を刻んでいた。 やがて、開け放たれた窓から「仕様書にない」春の匂いが流れ込んだとき。 ふたりの胸の奥で、同じ音が静かに響き出す。 「生きることは考えることだ」 終わった世界に取り残されたふたりが紡ぐ、静寂と温もりに満ちたSF会話劇。 第三回さいかわ卯月賞 参加作品です。 ギリギリの提出、申し訳ありません。

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カクヨム2026/04/30
  • 現在の作品仕様書にない春