あらすじ
王太子に婚約破棄を告げられたその日、公爵令嬢レティシアが最初に覚えたのは──安堵だった。
彼女には秘密がある。前世の記憶を持つ転生者で、ここが自分がかつて遊んだ乙女ゲームの世界だと知っていた。悪役令嬢として生まれ、婚約破棄され、辺境へ追いやられる。そのシナリオを三年前から知っていたレティシアは、ひそかに「その後の人生」を準備していた。薬草の知識、調合の技術、必要な道具一式。全部、辺境で生きるために。
流刑同然に送り込まれた先で待っていたのは、寡黙な辺境伯ヴァルクと、薬草の宝庫のような大地だった。荒れ地を耕し、村の病を癒し、気づけば「辺境の聖女」と呼ばれるほどになっていた。
そこへ王都から使者が来る。疫病が猛威を振るい、特効薬を作れるのは「あなただけだ」と。
「今さら戻れというのですか? 断ります」
捨てた側は後悔し、捨てられた側は笑って生きている。これは、本当の居場所を見つけた令嬢と、不器用な辺境伯の、じんわり温かい溺愛の話。