あらすじ
「あなたなら分かってくれるでしょう!?」
「分かりました。それでは、これで最後の肩代わりといたします」
拾われ子のリナは、伯爵令嬢セシリアの小間使いとして働いていた。
本来なら令嬢本人が身につけるべき社交の作法を、リナはずっと裏で肩代わりして、セシリアに伝えていた。
そのおかげで、セシリアは「聡明で気品ある令嬢」と評判になる。
そんなセシリアに、格上の侯爵家との縁談が決まる。
相手は、王家にも近い名門貴族――『冷徹侯爵』アヴェル・スレフィンド。
王宮の慣例にも、貴族同士の馴れ合いにも流されず、冷徹に自らの仕事を全うする男。
伯爵家は大喜びするが、セシリアは庭師の青年と身分違いの恋に夢中。
そして縁談当日の朝、彼女はリナ宛ての書き置きを残して逃げ出した。
『あなたなら、私の気持ちを分かってくれるでしょう?』
侯爵家の迎えは、すでに門前に来ている。
そこで伯爵家が選んだのは、セシリアの仕事をすべて肩代わりしてきた小間使いリナを、影武者として侯爵家へ差し出すことだった。
しかし、冷徹侯爵は初対面で告げる。
「――君は、セシリア・ラングフォードではないな」
すべては、そこから始まった。