あらすじ
かつて「神童」と呼ばれた天才鍛冶師・朔夜《サクヤ》。
至高の一振りを追い求めた末に挫折した彼は、今や場末の酒場で安酒に溺れる「なまくら鍛冶」へと成り下がっていた。
運命を変えたのは、一人の女が吐いた卑小な「嘘」。
「この男こそ、神の首を落とす“真理の刃”を打つ権化である」
聖女への詐欺を働こうとしたその嘘は、あろうことか国王の耳に届いてしまう。
差し出されたのは一塊の霊鉱石。突きつけられたのは「神を殺す剣を打て。失敗すれば死罪」という冷徹な宣告だった。
女は逃げ、騎士団に包囲された工房で、朔夜は泥を啜り、無様に死を恐れ、床を転げ回る。
だが、絶望の極致で月の光に照らされた霊鉱石を目にした瞬間、彼の脊髄を奔ったのは、恐怖を塗り潰すほどの強烈な「職人の業」だった。
「逃げられぬのなら、この石を己の醜悪な魂の道連れにしてくれよう」
視覚を焚べ、聴覚を削り、言葉を捨て――。
男が人間であることを辞める時、世界そのものを切り抜く「究極の嘘」が産声を上げる。