あらすじ
世界が"平和"を手に入れたのは、すべてを焼き払った後だった。
一九三九年に始まった第二次世界大戦は、我々の知る歴史とは違う結末を迎えた。
ナチス・ドイツがヨーロッパを制圧し、ソビエト連邦は崩壊。アメリカすらも核の炎によって沈黙させられた。
勝者であるたった一人のカリスマが作り上げた欧州の覇王、ナチス・ドイツ。
太平洋の覇者で大亜細亜の盟主、大日本帝国。
そして敗戦国でありながら世界一の経済力を持ち、民主主義の最後の砦、アメリカ合衆国。
三つの超大国が睨み合う、冷たく歪んだ"新秩序"の時代。
そのしわ寄せは、極東ロシアの凍てつく大地に現れていた。
旧ソ連の瓦礫の中で生まれたセルゲイ・スモレンスキーは、家族を失い、軍閥の少年兵として「殺さなければ殺される」地獄を生き抜いてきた。
飢えと暴力だけの毎日に倦み疲れた彼が抱いたのは、ただ一つのささやかな願い。
――「普通に生きて、普通に死にたい」
彼は愛銃を背負い、シベリアの雪原を東へ逃避する。
目指すは、かつての敵国・大日本帝国が統治する港湾都市ウラジオストク。
「シベリアの唯一の楽園」と噂される都市へ。
だが、彼はまだ知らない。
その街への一歩が、世界を揺るがす巨大な戦争と、血に塗れた運命への入り口であるということを。
圧倒的な暴力のシステムに抗う、ただ一人の青年の苛烈な戦記が今、幕を開ける。