あらすじ
警視庁捜査一課に所属する42歳の独身刑事・栗原剛。彼は過酷な連続勤務を終え、数年ぶりの有給休暇を満喫しようとしていた。帰路の途中、晩酌のつまみに絶品の「イカの塩辛」を買おうと地元の商店に立ち寄るが、持ち歩いていた署の余り物の弁当を万引きしたと店主に勘違いされ、所轄の若手警官に連行されてしまう。
取調室で警察手帳を提示し、呆気ない冤罪騒動は終わるかと思われた。しかしその直後、栗原の直属の上司である冷徹な関川警部が取調室に現れ、事態は急転する。
都内で連続発生したコンビニ強盗や通り魔事件。その実行犯たちが一様に「栗原刑事に指示された」と供述しているというのだ。状況を飲み込めない栗原の目の前で、さらに新宿駅で爆弾テロが発生。直後に警察と報道機関へ届いた犯行声明文には、信じがたい要求が記されていた。
『教祖・栗原様を解放せよ。さもなくば、この街は火の海に沈む』
単なるケチな万引き犯から、たった数時間で国家を揺るがすテロ組織の「教祖」へと仕立て上げられた栗原。異常なスピードで完璧な「でっちあげ」が進行し、世界中が自分を悪魔と呼ぶ絶望的な状況下で、実直な刑事は冷めた幕の内弁当の蓋を開ける。見えない真犯人の正体を暴くための、孤独な捜査を始めるために——。