あらすじ
「恋だの愛だの、そんな安い弾丸(タマ)で私の心臓を抜けると思ったかしら?」
かつて不夜城と呼ばれた街で、孤高の私立探偵として生きた女。
彼女が最期に見たのは、信頼していた相棒の裏切りと、胸を貫く一発の鉛玉だった。
――次に目を覚ますと、そこは生前、妹が熱狂していた乙女ゲーム『ラブロマンス・アカデミー』の世界。
鏡に映るのは、十六歳の美貌の公爵令嬢、ロザリア・ド・モレッティ。
本来なら、第一王子の婚約者として華やかな社交界を歩むはずの「悪役令嬢」である。
だが、この世界は何かがおかしい。
キラキラした王子様は、裏で麻薬と武器を統べる「若き独裁者(カポ)」。
爽やかな騎士団長は、敵対組織を無感情にバラす「掃除屋(クリーナー)」。
ここは、愛を語る学園などではなく、血で血を洗うクライム・サスペンスの舞台だったのだ。
ロザリアの実家「モレッティ家」もまた、暗黒街に根を張るマフィアの総本山。
病に倒れた父の後を継ぎ、弱肉強食の抗争へ放り出されたロザリアは、前世で培った「鉄火場の流儀」を武器に、ドレスを翻して銃を執る。
「ドレスが汚れる? 構わないわ。返り血ならもう見飽きているもの」
群がる裏切り者、利権を狙う王族、そして謎の「魅了」を振りまくヒロイン。
すべての牙を叩き折り、彼女はハーブ製の葉巻を燻らせながら、闇の頂点(ドン)へと登り詰めていく。
これは、恋に浮かれる世界を、ハードボイルドな美学で塗り替える一人の女の物語。