あらすじ
十年前、花野枝村で幼なじみの優里が忽然と消えた。
最後に一緒にいたはずなのに、その日の記憶だけが抜け落ちたまま大人になった志音は、失われた過去をたどるため、梅雨の村を訪れる。
雨に導かれるように辿り着いたのは、紫陽花に囲まれた古民家「あじさい荘」。
そこには、十八歳ほどの姿をした不思議な管理人・蒼空がいた。
「ここは、迷子の人を受け入れる場所なんだ」
やがてあじさい荘には、行き場をなくした元ホストの椋太、愛猫を失い心を閉ざした湊が集まってくる。
それぞれに傷を抱えた青年たちは、奇妙で優しい共同生活の中で、少しずつ心をほどいていく。
けれど、あじさい荘にはまだ誰も知らない秘密があった。
蒼空の正体、古民家に込められた願い、そして十年前に消えた優里の真実――。
これは、過去に傷を負った青年たちが、紫陽花の古民家で出会い、血のつながりを超えた“家族”と未来を取り戻していく、優しい奇跡の物語。