あらすじ
音が泥のように濁る病で夢を絶たれたピアニストの奏。彼が辿り着いたのは、偏屈な庭師・五郎が営む「雨待ち庭」だった。四季折々の雨に名前があることを知り、孤独な人々と触れ合う中で、奏の耳には再び美しい和音が響き始める。これは、止まない雨を祝福に変える、再生と継承の物語。
登場人物
奏(かなで)
将来を嘱望されたピアニストだったが、ある日突然、音が「泥」のように濁って聞こえる原因不明の症状に見舞われる。絶望の中、五郎に拾われ「雨待ち庭」の庭師見習いに。繊細で「可愛げのない」性格だが、雨の名前を知ることで世界の美しさを再発見していく。
五郎(ごろう)
「雨待ち庭」の主人で、偏屈な老庭師。言葉は鋭く棘があるが、その裏には深い慈愛を秘めている。亡き妻・結衣のために雨の名前を集め続けてきた。奏に庭師の技術と「世界の聴き方」を託し、静かにこの世を去る。
志乃(しの)
庭に併設された茶房「雨宿り」を営む、穏やかで聡明な女性。五郎の過去を知る数少ない理解者であり、奏を温かく見守る母のような存在。彼女の淹れるハーブティーやスイカは、訪れる人々の心を解きほぐす。