あらすじ
「どうか、僕たち人間を嫌いにならないで――」
平和は、誰かの犠牲の上に降り積もる雪のように、白く、冷たい。
かつて歴史を記す機関にいた『朱槍のパロマ』は、他人の感情が流れ込む呪われた眼を持ち、争いの地『八地区』で医者として、そして戦士として生きていた。
魚人と人間が果てなき小競り合いを続ける辺境の地にて。癒えぬ傷を抱えた二人の少年と出会い、パロマは『歴史を記す者』から『居場所を守る者』へと変質していく。
人間から故郷を追われ、憎しみの念に憑りつかれた『魚人』。
人間からも魔族からも不吉と忌み嫌われる鬼子の少年『ホーク』。
そして、凄惨な過去を背負い、自分の名さえ拒絶する半魚人の少年『イサナ』。
これは、正義でも悪でもない、ただ明日を生きるために血を流し合う者たちの、記録である。
魚人たちに宿る『先祖の念』という名の呪いが、平穏を許さない。
愛が憎しみに変わり、共感が殺意に染まっていく中で、パロマが最後に選んだ『平和の形』とは――。
歴史の闇に消えたはずの、一羽の『鳩』が遺した日記。
その一文字一文字に刻まれた、過ちと真実の境界線。