あらすじ
「シンデレラ」の正体は、暗殺者だ。
侯爵家に拾われた孤児のエラは、没落令嬢に成り代わり王宮の舞踏会へ送り込まれた。標的は敵対派閥の伯爵子息。篭絡して、吐かせて、処理する。それだけのはずだった。
狂ったのは、最初の一歩だった。
声をかけてきたのは標的ではなく、第二王子エドゥアール。「美貌だけが取り柄の飾り物」と呼ばれる男が、水面のような目でエラを見て言った。
「婚約という形式が、互いにとって都合がいい」
政治的な駒として使われるだけだ。エラはそう計算した。利用するつもりで、利用させるつもりで、笑顔を貼り付けて頷いた。
感情は計算を鈍らせる。六つの頃から叩き込まれた、唯一の生存戦略。
——では、この鼓動は何だ。