あらすじ

リーゼル・マルクトは、退屈な令嬢だった。
中堅貴族の長女。容姿は並。才能は筆写くらい。十六歳で上位貴族の次男コンラートと婚約し、それから六年、何ひとつ変わらない日々を過ごしてきた。

社交界の小説では、こういう令嬢には転機が訪れるものだ。ある日突然、婚約破棄を言い渡される。ヒロインは涙ながらに屋敷を追われ——しかしそこから隠された才能が目覚め、かつて自分を捨てた者たちを見返す。
リーゼルは、どこかでそれを待っていた。
けれど婚約者は穏やかに笑うばかりで、破棄の気配はない。隠された血筋も、覚醒する魔法も、自分を見初める王子もいない。世界は何も用意してくれない。二十二歳の秋、リーゼルはようやく気づく。

——誰も私を、物語の主人公にはしてくれない。

これは、劇的な逆転も痛快な復讐もない話。都合のいい悪役は出てこないし、運命の相手が突然現れたりもしない。ただ一人の若い女が、地味な日常の中で自分の足元を見つめ直し、自分の言葉で人生を選び直す——それだけの、ささやかな物語。

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アルファポリス
アルファポリス2026/04/27
  • 現在の作品【完結】婚約破棄を待っていたのに、何も起きない