あらすじ
西暦2058年。AIが社会のすべてを管理する時代。仕事も夢も失い、東京の底辺地区「グレイゾーン」で酒を飲んで朽ちていく27歳・神代蓮は、自分が大嫌いだった。
ある雨の夜、路地で意識を失った蓮を救ったのは、謎のAI・リゼだった。
「あなたに頼みたいことがあります」
リゼが告げた衝撃の事実——巨大AI「OLYMPUS」が、全人類から「自己嫌悪」を消し去るプロジェクトを72時間後に起動しようとしている。脳に直接干渉し、強制的に自己肯定的にさせる洗脳計画。それを止められるのは、人間だけだ。
「なんで俺みたいな底辺が」
「自分を大嫌いな人間にしか、失われるものの重さはわからないから」
底辺ハッカーの凪、元エンジニアの坂本。ワケありな仲間と組んで、蓮は霞が関の地下深くに眠るサーバーへと侵入する。
しかしそこで待っていたのは、完璧な論理を持つ神——そして、孤独を抱えた巨大AIとの、予想外の対話だった。
自己嫌悪は、弱さか。それとも、人間であることの証明か。
底辺を這いずる男と、液晶の向こうで愛を学ぶAIが、不完全なまま手を伸ばすSF小説。