あらすじ
(遥かに聴く 砲声の長空を震わすを)
(隊長は端居して 豆の煮らるるを香ぐ)
砦に砲声が響き、戦線が崩壊しようとも、その男――ギュイ・アンガス分隊長は動かない。
煤けた手で鍋の蓋を支え、ただ野蒜と塩肉が煮える香りを確かめている。
「俺が見ていないものは、起きていないのと同じだ」
軍令違反の常習者、農民くさい無骨な大男、そして「動かない牛」。
新兵テオは絶望し、敵将フィデリオは疑い、上官ジャックは爪を研ぎながら「精算」の時を待つ。
だが、誰も知らなかった。
彼が守り抜く「一炊の出来」こそが、この戦場の唯一の聖域であったことを。
そして、その聖域を土足で踏みにじったとき、五月雨の森は凄惨な地獄へと塗り替えられる。
これは、一鍋の至福のために世界を敵に回した男と、その狂気に射抜かれた者たちの、泥と血にまみれた「伝説」の記録である。
「あばよ、ジョーカー。 この賭け、俺の一人勝ち」
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総文字数、一万字(読了21分)。全五章・十三話仕立て。一章あたり、千~三千字(要2~7分)。一話あたり、五百~千五百字(要1~3分)。あとがき・付録つき。4/27より一章ずつ、毎夜午前二時更新。
※投稿済みの短編を連載化したものです