あらすじ
守屋悠弥(32歳)は、不動産会社の営業として毎日数字を追いかけていた。
本当は文学部で民俗学を学び、土着の伝承や妖怪譚を研究したかった。
それなのに現実を選び、「せめて土地に関わる仕事」という自分の足掻きで不動産業界に身を置いた今は、「利回り」や「効率」を追いかけている。
心は擦り切れ、立ち止まることさえ許されない強迫観念に囚われていた。
そんなある朝、気づけば悠弥は見知らぬ森の中に立っていた。
目の前に現れたのは、細身の長髪の男・サトリ。
彼は静かに告げる。
「ここは浮世と常世の狭間。貴方の心に生じた『隙』が呼び寄せた場所です」
サトリを皮切りに、悠弥は次々と狭間の妖怪たちと出会っていく。
――これは誰にも知られない狭間での物語、失ったものを取り戻す冒険譚でもなく、輝かしい英雄譚でもないちょっと変わったおじさんの、ちょっと変わった物語。