あらすじ

山の上にある古いホテルで、名家の結婚式が開かれる夜。 町外れでひっそり暮らす男のもとに、一通の招待状が届く。差出人の名はなく、白い封筒の中には式の案内と、古い日付だけが記されていた。 男は誰にも告げず、古い車を走らせる。 雪の残る坂道。ヘッドライトの先を、正装の列が黙って歩いている。追い越しても、誰ひとり振り向かない。 会場は明るく、あたたかく、よく整っていた。 磨かれた床。乾いた笑い声。冷えたグラス。祝うための言葉。 けれど、肝心の花婿を見た者はいない。名を口にすると、皆どこか曖昧に微笑むばかりだった。 男は招かれた理由を知らない。 ただ、封筒に記された数字だけは、忘れたことがなかった。 外では雪が降り続いていた。 山は静かに湿り、地面の奥で、何かがゆっくり軋んでいる。 誰が男を呼んだのか。 誰のための式なのか。 そして、ここへ集まった人々は、何を待っているのか。 祝福と沈黙が同じ卓に並ぶ、ひと晩の物語。 『花婿のいない結婚式』

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カクヨム
カクヨム2026/04/26
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