あらすじ

遠洋マグロ漁船の甲板員として10年、来島カズマ(きじま かずま)は底辺を這いずり回ってきた。学歴なし、コネなし、ただひたすら網を繕い、魚を締め、エンジンの油にまみれる日々。とりわけ憎いのが、自分の手柄を奪い続けた甲板長の鬼塚毅(おにづか たけし)――現場で殴る蹴るは当たり前、その上カズマの提案を全部自分の発案として船長に報告する、最低の上司だった。 ある嵐の夜、鬼塚の杜撰な指示で甲板から海へ投げ出されたカズマは、冷たい波に飲まれて意識を失う。 目を覚ますと、そこは中世風の港町・ライン・カラ。塩と魚の腐臭、垂れ流しの汚物、そして――海岸線に並ぶのは、彼の知る漁船とは比べ物にならないほど"原始的"な木造帆船だった。 魚は腹を出さずに腐らせて捨てる。網が破れたら丸ごと買い替える。船底の腐食は神に祈って治す。そんな"非効率の塊"のような漁業を見て、カズマは呆然とする。 (……これ、俺が現場でやってた当たり前のこと、全部できてないだけじゃないか?) 血抜きと神経締めで魚の鮮度を倍にし、網針一本で破れた網を蘇らせ、船尾に小さな亜鉛の塊をくくりつけて船を守る。下っ端時代に叩き込まれた"地味な技術"が、この世界では奇跡として崇められていく。 やがてカズマの噂は王都にまで届き、王女セレネからの招聘が舞い込む。隣接する海洋帝国・ヴァルナハト帝国の脅威が迫る中、王国は失われた航海技術を取り戻そうとしていた。 そしてついに――敵国の新任「海軍提督」として現れたのは、忘れもしないあの男。鬼塚毅。 かつて自分を海に突き落とした最低の上司が、今度は艦隊を率いてカズマの新しい故郷を蹂躙しに来る。 「お前か、こっちの世界で粋がってる雑魚は」 「……鬼塚。今度は逃げないぞ」 下っ端の意地と、知識と、技術。 そして"船乗りなら誰でも知ってる、地味で退屈な、たった一つの常識"が――この戦争の結末を、世界の在り方そのものを、根底から書き換えていく。

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小説を読もう2026/04/26
  • 現在の作品最底辺の甲板員、異世界の海を制す ~下っ端漁師が現代知識で成り上がる転生記~