あらすじ
~心の声を拾い上げる不思議な無線機に出会った、テレビ業界で心をすり減らした元ADと、イケメン留学生が雪降る街で織りなす物語~
「ノイズは全部カットしろ」――東京のテレビ番組制作会社でADとして心身をすり減らした挙句、マッチングアプリで出会った男に騙され、逃げるように故郷の長野県茅野市へ帰ってきた26歳の東城未海(とうじょう・みう)。
祖母の家に居候することになった彼女が出会ったのは、亡き祖父が遺した古い真空管無線機と、離れに下宿する容姿端麗な台湾からの大学院生・林佑成(リン・ヨウチェン)だった。
ある雪の夜、未海は電源の入ったままの古いラジオから、ノイズ混じりの不思議な声を聴く。
「――ごめん。怒ったんじゃねえんだ」
「――おばあちゃん、ごめん。あの味は出せないや」
それは、かつてこの町の誰かが送信ボタンを押し、結局言葉にできずに飲み込んでしまった想いだった。
雪の夜という特殊な気象条件にだけ届くその微弱な声を、未海と佑成が取材することで、彼らの心の氷を溶かしていく。
不器用なスキーレンタル屋の店主、おやき屋を継いだ同世代の女性、戦争の記憶を抱える元少年兵。マイペースでどこか強引な佑成に巻き込まれるように声の主たちを救っていくうち、未海は自身の人生も前向きになっていることに気付く。
やがて二人は、未海の祖父が遺したカセットテープに、海を越えた台湾とのある秘密の交信記録が残されていることに気づく。そしてそれは、佑成がはるばる茅野へやってきた本当の理由でもあった。
日台の歴史、台湾肉まんと信州おやきの香り、そして青い信州の空。
ノイズを切り捨てることに疲れた主人公が、ノイズの中に隠された本当の大切な声を見つけ出し、止まっていた自身の人生を再び動かしていく。
長野の雪降る街がお届けする、少し不思議で心温まる物語。