あらすじ
「もし雨が降ったら」「もし実験器具が破損したら」「もしあの人の言葉が嘘だったら」――。
高校二年生の理科室の主・白石 結(しらいし ゆい)の頭の中は、常に最悪のシチュエーションを想定する「心配性」で満たされている。彼女にとって、不確定要素の多い人間関係は危険な化学反応のようなもの。だからこそ、いつも安全な化学準備室に引きこもり、静かにフラスコと向き合っていた。
しかし、彼女の「あらゆる可能性を否定せずに検証する」という過剰なまでの警戒心は、日常に潜む不可解な謎を解き明かすための最強の武器でもあった。
「奇跡なんてありません。そこにあるのは、必然の物理化学的な反応だけです」
持ち込まれる日常の謎に対し、結は自ら動くことなく、安楽椅子探偵ならぬ「理科室探偵」として、鮮やかな論理と化学の知識で真実を導き出していく。これは、他者の心という複雑な化合物を、少しだけ優しい形へと変化させる、ひとりの少女の物語。