あらすじ

兄の死は、事故のはずだった。 崩落した現場で、彼は確かに手を伸ばしていた。――助けるために。 それなのに、なぜかその記憶だけが、曖昧に途切れている。 春は、もう終わっているはずだった。 それでも桜は咲いていた。 花びらの中心に現れたのは、“聖女”と呼ばれる女――御影雪乃。 彼女はただ微笑み、こう言う。 「ずっと、ひとりで持っていたんですね」 触れられた瞬間、胸の奥に沈んでいた何かがほどけていく。 罪も、後悔も、すべてが軽くなっていくような錯覚。 だが―― 「信じないで」 割り込んできた女は告げる。 その救いは本物ではないと。 “聖女”は何も消さない。ただ、消えたように見せるだけだと。 やがて明らかになる、異様な仕組み。 人の罪を引き受けるように見える存在。 そして、兄の死に隠された違和感。 桜前線は北へと進む。 止まることなく、人の心をなぞるように。 救われたいと願ったその瞬間から、 すべては静かに壊れ始めていた。 ――桜は、ただ映しているだけだ。 消えないものを、美しく見せながら。

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エブリスタ
エブリスタ2026/04/25
  • 現在の作品聖女の足跡 ―桜前線は罪を映す―