あらすじ

毎朝六時、三十年間コースを変えたことがない。 銀杏並木、神社の脇、商店街の裏道。所要三十分、約四千二百歩。男はただ、健康のために歩いている。それだけだ。 ただ——隣人の不倫現場を見た翌週、その家族は消えた。領収書を一枚拾って返した翌月、その店は税務調査を受けた。失踪前夜の女と挨拶を交わしたが、三月の朝は暗かったので、顔はよく見えなかった。 今朝も男は歩く。何も見ず、何も聞かず、コースを変えずに。 これは、善意の話だ。たぶん。

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エブリスタ2026/04/24
  • 現在の作品読切短編 善意の散歩者