あらすじ
なぜ、左の目が青いのか。そこに隠された戦争の傷跡、母が貫いた自己犠牲。愛を信じない青年が最初で最後の恋をし、手放すまでの物語。/「俺が生まれた瞬間、母の妻としての人生は終わった」。自分が青い左目を持って生まれたことで、母は夫に疑われ続け、疑われたまま死んだ。父にすら愛されない息子、それが自分に下された罰ならば、誰も愛さないと決めた青年・大斎 将生。彼が連城 聡と出会ったのは、民俗学を学ぶため進学した大学の入学式だった。隣席というだけで屈託なく話しかけてくる連城に戸惑いつつ、翳りのない彼の物腰に心惹かれてゆく。やがて、自分のために何一つ犠牲にしてほしくない、そう願うほど大切な存在となった時、大斎は一つの決断を迫られる。彼はなぜ、忘れ去られることはあっても、許されることは決してない選択を下したのか。戦場を生き延びた祖父、戦場で癒えない傷を負った祖母、妻を信じられなかった父、それでも父を愛した母。愛する者のために自らを犠牲にした人々と、それぞれの思いの物語。