あらすじ
コンビニのアルバイトを始めたばかりの春。
たった数時間のシフトでも足が痛くなって、帰るころには何もしたくなくなる。
その疲れの中で、主人公はようやく気づく。
母が亡くなったあと、父はずっと一人で働き、家事をして、自分を育ててきたのだと。
工場で働いて、帰ってきて、飯を作って、洗濯をして、弁当を詰める。
そんな毎日を、父は一度も「大変だ」と言わなかった。
初めての給料日。
たいした額じゃない。けれど主人公は、自分の働いた金で父に何かしたいと思う。
選んだのは、駅前の牛丼屋。
豪華でも特別でもない、牛丼一杯。
でもその夜、たしかに息子は父の隣へ少し近づいた。
言えなかった「ありがとう」を、ようやく言葉にできた。
派手な出来事はない。
それでも、湯気の向こうに確かに愛情がある。
父と息子の静かな時間を描く、あたたかくて少し泣ける家族小説。