あらすじ

「俺は……失敗したのか」  ヒマラヤの僧院で、親友テンジンは血を吐きながら死んだ。  虹の体への到達を信じたまま、腐敗のにおいの中に。  ドルジェはその最後の問いに、答えられなかった。  京都の禅寺で、蓮水は沈黙の井戸の底に、一人の声を封じていた。  かつて自分が言葉で殺しかけた、親友の声を。  光を求める僧と、沈黙に逃げる僧。  ある満月の夜、二人の魂は互いの肉体に入り込んだ。  標高四千二百メートルの刃物のような空気の中に蓮水は立ち、京都の湿った出汁のにおいの朝に、ドルジェは目覚める。  不快なはずの他人の体の中で、二人はやがて知っていく。  自分の修行が、傷から目を逸らすための逃避だったことを。  恐怖の鎧としての光。  贖罪の形をした沈黙。  光と泥、論理と沈黙、生と腐敗――それらは、同じひとつのものの、二つの顔だった。  腐敗の意味を、ドルジェが言葉にした時、テンジンの幻影は初めて微笑む。  そして、静かに消える。

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カクヨム
カクヨム2026/04/25
  • 現在の作品【異宗教入れ替わり短編小説】光の殻、泥の仏