あらすじ
高校生の影谷迴は、中学時代の彼女の浮気の末に「虚無」へと至った。
彼に残されたのは、枯れ果てた心と、自分の影に物体を自由に出し入れできる超能力『影収納』だけ。
「愛なんて幻だ。俺は影から出した美味いもんを食って、静かに生きていく」
そう決意したはずの迴だったが、ある日の昼休み、屋上で「影から特上寿司桶を取り出す」という決定的な瞬間を、クラスメイトの氷室凛に目撃されてしまう。
氷室凛——黒髪赤眼の美貌を持ち、その鋭すぎる毒舌から「氷の女王」と恐れられる孤高の少女。
秘密をバラされると絶望する迴に対し、彼女が突きつけた条件は、あまりに予想外なものだった。
「その中トロを私に寄越せ。……秘密を守ってほしければ、明日も『それ』を出しなさい」
実は食いしん坊で、家では孤独を抱える「かまちょ」な一面を持つ凛。
最初は単なる「便利な出前」として迴を利用していた彼女だったが、迴が影から取り出す「出来立ての温もり」と、彼の飾らない優しさに触れるうち、その感情は歪な執着へと変質していく。
「影の中に他の女の私物を入れるな。……お前の影も、その中身も、全部私のものだ」
元カノに浮気されたトラウマで一歩引いてしまう迴と、独占欲を毒舌で隠しきれない凛。
影の中に閉じ込めたはずの感情が、二人の「秘密の食事会」を通じてゆっくりと溶け出してゆく。
これは、孤独な二人が胃袋と影を通じて繋がる、ジレ甘で少しだけ重たい放課後デリバリー・ラブコメディ。