あらすじ

戦場に咲く一輪の徒花――。 楠木正成の血を継ぐ美貌の将、楠木多門。だがその正体は、死に場所を求める娘・結(ゆい)であった。 敗軍の将として捕らえられ、敵将・足利直冬の前に引きずり出された彼女を待ち受けていたのは、死よりも残酷な「検分」という名の恥辱。 全軍の目前で晒(さらし)を解かれ、女であることを暴かれた結。しかし、自分を凌辱せんとする直冬の瞳の中に、彼女は自分と同じ「家名という名の檻」に囚われた孤独な魂を見出す。 「俺は足利の者ではない。ただの直冬だ」 父・尊氏に拒絶され、歴史からも疎まれた男。 家名を捨て、武士としての死すら奪われた女。 昨日の仇敵は、今宵、互いの傷を舐め合う唯一の共犯者となる。 雨の陣中、秘められた褥(しとね)で交わされるのは、愛か、あるいは破滅への契約か。 石堂頼房の陰謀、兄・正行の追撃――。 歴史の濁流に抗い、足利でも楠木でもない「個」として生きることを選んだ二人の、烈しくも艶やかな戦いがいま始まる。

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カクヨム
カクヨム2026/04/25
  • 現在の作品泥濘(でいねい)の菊水 ―足利直冬、修羅の契り―